新型コロナウイルス関連の緊急事態宣言と賃料減額の申し入れへの対応
新型コロナウイルスの感染拡大により、緊急事態宣言が発令され、国民への外出自粛が要請されたため、私が所有している賃貸ビルの飲食店テナントの売り上げが通常営業時よりも60%減少したとして、借主から、月40万円の賃料(消費税別)を月20万円(消費税別)に減額して欲しいとの申し入れがありました。
貸主として、ある程度申し入れに応えてあげたいと考えていますが、具体的にどのように対応したらよいでしょうか?
- テナントによる賃料減額の申し入れに対応してあげたいと考えるのであれば、具体的には、一定期間についての①賃料の一部についての支払の猶予、または、②賃料支払義務の一部の免除を合意することで対応するのがよいでしょう。なお、この場合、「賃料の減額の合意」をすべきではありません。
- 一般的に、「賃料の減額を合意すること」は、建物賃貸借契約に基づいて支払うべき賃料を将来に向かって減額変更することを意味します。例えば、月40万円の賃料を月20万円に減額することを合意すると、借主は、その後は、毎月20万円の賃料を支払えばよいことになります。しかし、後に新型コロナウイルスの影響が収まり、経営環境が改善された場合に、貸主が借主に対して、減額前の賃料と同額を支払うことを求めようとすると、その時点で、改めて賃料増額の手続が必要となり、借主が賃料の増額に応じなければ、賃料増額請求の調停・訴訟の手続を執ることが必要となる可能性があります。その結果、余計な時間・費用がかかってしまいます。
- 3ヶ月間だけ賃料を減額してあげようと考えるのであれば、例えば、4月・5月・6月分の賃料について、賃料額の一部の支払義務を免除し、7月分以降は、これまでの契約どおりの賃料を支払うとの合意をする方法があります。
- また、貸主として、「借主が気の毒だから、賃料の支払を猶予してあげよう」というのであれば、例えば、3ヶ月間の賃料について、半額の支払を猶予し、猶予期間経過後、売り上げが回復するであろう時期に、猶予した賃料を例えば6回あるいは12回といった分割によって支払ってもらう方法を提案するのがよいでしょう。
- なお、家賃保証会社を利用している場合、支払猶予や、賃料の一部免除を行う前に、家賃保証会社との調整が必要となります。
- 例えば、貸主と借主間で支払猶予の合意をしたとしても、家賃保証会社が家賃支払い期日に貸主に賃料を支払い、家賃保証会社が借主に請求して支払を受けるという支払方法が採られている場合も多いでしょう。このような場合、家賃保証会社と事前に協議が出来ていないと、借主が支払猶予を受けたはずの家賃を家賃保証会社から請求されてしまう場合があります。
- また、支払が猶予されて、将来分割払いされる家賃についても、家賃保証会社の保証の対象となるのかを確認する必要があります。
- 支払いを猶予した家賃も保証の対象となっていればよいのですが、もし、保証会社との保証委託契約により、保証の対象から除外されるような場合には、貸主として、保証を受けられないリスクを考慮して、支払い猶予に応じるか、判断する必要があります。