民事再生と代表取締役の地位

 会社の代表取締役として民事再生を申し立てた場合、代表取締役としての地位はどうなりますか?やはり、代表取締役を辞任しなければならないのでしょうか?

  1.  民事再生は、手続開始後も、再生債務者自らが会社の経営を行い、再生計画案を作成することを予定した債務者主導型の再建手続(DIP型ともいいます。)です。
    1.  会社更生手続では、会社更生の申立がなされると、裁判所が選任した保全管理人に事業の経営権及び財産の管理処分権が専属し(会社更生法32条1項)、従前の代表取締役等の経営陣は、これらの権限を失うこととなります。
    2.  また、更生手続が開始すると、開始決定と同時に、更生管財人が選任され、更生管財人に事業の経営権及び財産の管理処分権が専属することとなります(会社更正法72条1項)。
    3.  これに対し、民事再生手続では、会社更生のように、当然に管財人が選任されるといった規定はなく、再生債務者自らが会社の経営を行い、再生計画案の立案も自ら行うのが原則です。ただし、例外的に、再生債務者の財産管理が失当であるとき等に、管財人が選任されることもあります(民事再生法66条)。
  2.  そのため、民事再生を申し立てた場合であっても、代表取締役としての地位は失わず、代表取締役はそのまま会社の経営に関与するのが原則です。特に、中小企業等では、当該代表取締役個人の能力や人脈等によって、取引先の信頼を得て、会社が運営されていることも多いため、会社の再建のためにも、代表取締役がそのまま経営に当たることが必要な場合も多いものと考えます。
  3.  したがって、民事再生を申し立てたからといって、直ちに代表取締役を辞任する必要がある訳ではありません。
  4.  もっとも、経営を悪化させた責任が代表取締役にある等、代表取締役の方で経営責任を取らないと、債権者から民事再生への協力が得られない場合もありますし、上記のとおり、財産管理の状態が悪い等として、債権者から管財人の選任を申し立てられる場合もあります。
  5.  したがって、民事再生申立後も、引き続き、代表取締役として経営に関与できるか否か、言い換えれば、代表取締役としての地位を維持できるかどうかは、会社の状況、債権者の意向等を踏まえて、事案毎に個別に判断する必要があります。