破産法53条に基づく賃貸借契約の解除と中途解約の違約金
当社が保有している賃貸ビルを借りているX社について破産手続が開始し、破産管財人の弁護士から、破産法53条に基づく解除通知が届きました。当社とX社との賃貸借契約書には、借主からの中途解約については、6か月分相当の違約金を支払って即時解約できるとの特約が定められていますが、破産管財人から即時解除がされた場合であっても、この特約に基づき、違約金を請求したり、敷金から違約金相当額を控除することができるのでしょうか?
- 本件で破産管財人が行った解除は、破産法53条に基づくものです。賃貸借契約のような双方未履行の双務契約について、破産管財人は、債務の履行をして相手方の債務の履行を請求するか、解除権を行使して契約を消滅させるかの選択権を有しています。
- 破産管財人として、破産財団にとって賃貸借契約を継続する意味がないと考えた場合には、本件のように解除が選択されることとなります。
- 破産法53条に基づく解除の場合に、賃貸借契約の中途解約に関する違約金の定めの適用があるか否かについて直接判示した判例はありません。しかし、近時の判例で、リース契約の事例ですが、民事再生の場合に、リース物件のユーザーが倒産状態になった場合に、サプライヤーがリース契約を解除できるとする、いわゆる倒産解除特約が無効であると判示されたこと(最判平成20年12月16日)、破産法53条の解除は、法が特別に認めた破産管財人の解除権であることから、同法の解除の場合には、違約金条項は適用されないとする立場が有力となっています。
- そのため、破産管財人から破産法53条に基づき賃貸借契約を解除された場合には、貸主は中途解約の違約金を請求したり、預かっている敷金から違約金を控除することはできません。