株券不発行会社とすることのメリット
株券を発行しないことにより、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
- 株券を不発行とすることにより、会社にとっては、株券の発行に要する費用や発行手続、保管にかかる手間を省くことができるというメリットがあります。
- また、株主にとっても、株券を保管する必要がないため、株券を紛失したり、偽造されるリスクがないというメリットがあります。
- 特に、株主が株券を紛失してしまい、第三者が当該株券を取得した場合には、株券を善意取得されてしまうという問題が生じます。
善意取得とは、株券の占有者は真の権利者と推定されるため(会社法131条1項)、紛失した株券を取得したAが当該株券をBに交付してしまった場合、Bが「Aは当該株式について真の権利者ではない。」ということを知っていたか、知らないことにつき重大な過失が認められない限り、Bが当該株券に係る株式を有効に取得することができるという制度です。
このように株主が株券を紛失してしまうと、第三者に株式を善意取得されてしまうリスクがあり、また、会社に対する権利行使や株式の譲渡をすることもできなくなってしまいます。 - 株券を紛失した株主は、会社に対して、株券喪失登録をするよう請求しなければならず(会社法223条)、この登録後1年を経過するまでの間に喪失登録された株券を所持する者から喪失登録の抹消申請がされなければ、株券を紛失した株主は新たな株券の発行を受けることができます(会社法228条)。
そのため、株券を紛失した株主は、最低でも1年間は新たな株券を発行してもらうことはできません。 - 他方、株券不発行会社の株主が亡くなった場合に、相続人がその株式が被相続人の遺産であることに気づかない、株主が第三者に対して当該株式を保有していることを証明できないといった事態が生じる可能性があるというデメリットがあります。
株主としては会社に対して、「株主名簿記載事項証明書」の交付を請求することができるので、この株主名簿記載事項証明書を取得しておけば、このような事態に対応することが可能です(会社法122条)。
株主名簿記載事項証明書とは、株主が会社に発行を申請した時点において、株主名簿に記載されている当該株主の保有株式数を証明する書類です。