会社が株式の準共有者の一人による株主権行使を認めた場合の効果
過半数の持ち分を有さない準共有者の1人が他の共有者の同意を得ずに株主権を行使したことについて、会社が認めた場合に、その株主権行使の効果は有効になるのでしょうか?
- 準共有者による株主権の行使については、会社側が認めたというだけでは足りず、当該権利行使が民法の共有に関する規定にしたがっていなければ有効となりません(最判平27・2・19)。なお、行使する権利の内容によって、変更・処分行為、管理行為、保存行為に分類され、扱いが異なりますが、準共有者の代表の選定は、管理行為に該当し、準共有者の持分の過半数で決めることができます。
- 株式が準共有である場合、原則として権利行使を行う代表者1名を選んで会社に通知する必要があります(会社法106条本文)。この定めは、準共有について、民法の共有の規定が準用されることを定めた民法264条の定めがいう、「特別の定め」に当たります。つまり、株式の共有については、原則として民法の適用が排除され、会社法106条本文が適用されることになります。
- ところが、さらに、会社法106条但し書きは、「株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」と定め、会社が権利行使を認めたときは、会社法106条本文を適用しないと定めています。そうすると、民法264条の「特別の定め」である会社法106条本文が適用されなくなり、もとにもどって、民法264条が適用されることになります。
- その結果、準共有者による株主権の行使については、民法の原則に戻り、民法の(準)共有の規定が適用されることになります。
- そして、株主総会における議決権行使は、管理行為にあたるので、共有持ち分の過半数を有する者の同意が必要となり、その同意が無ければ、管理行為の効果が生じず、議決権行使は無効となってしまいます。
- もし、会社が準共有者の一人の株主権行使を認めた場合に、当然に議決権行使の効果が発生するとなると、会社にとって都合のよい準共有者を選んで議決権を行使させることを認めることとなり、都合の悪い議決権行使は会社法106条本文を理由に廃除することができてしまい、株主総会決議が不公正なものとなる危険が生じます。
- なお、相続によって準共有となった株式が、発行済み株式総数の過半数占める場合には、株主総会の定足数を定款で削減しておかないと、相続人が争っていて株主権を行使する者を選べないという事態が生じ、株主総会を開催することすらできなくなる危険が生じます。
- そこで、そのような懸念に備えて、定足数を削減する定款の変更を行うことも可能です。