特別縁故者の財産分与

 私は、私の内縁の夫と生計を共にし、その生活の面倒を看てきました。それというのも、夫の親族はいずれも亡くなっており、夫婦同然で生活し、15年前に体を壊して寝たきりとなって以降も面倒を見てきました。
   夫は私たちの住んでいた自宅も含め不動産を多数所有しておりますが、預金はありません。これらの不動産のうち大部分は賃貸していますが、賃料の集金・建物の修繕も含め、私が管理しております。
   ところが、先日、夫が死亡しました。
   私としては、生まれてから死ぬまでの戸籍謄本・除籍謄本等を全て取り寄せても夫の相続人となる人物はいませんし、これまで面倒を看てきたので、夫の遺産の一部でも取得できないかと思っています。
   今後、どのように対応していけばよいのでしょうか?

  1.  相続人になることができるのは、子とその代襲相続人(民法887条)、直系尊属(民法889条1項1号)、兄弟姉妹とその代襲相続人(民法889条1項2号、2項)のみですので、ご相談者は相続人として相続を受けることはできません。
  2.  もっとも、ご相談者は特別縁故者として相続財産の分与を請求することができる可能性があります。特別縁故者への相続財産分与とは、相続人がいない場合に、被相続人の生前に特別の縁故があった方が、相続財産の全部または一部の分与を受けるという制度です(民法958条の3)。
  3.  特別の縁故があった者と判断されるかは家庭裁判所の審判によって決まり、親族であるというだけでは特別縁故者とは判断されませんが、民法の規定上も、被相続人と生計を同じくしていた者や被相続人の療養看護に努めた者は特別縁故者にあたるとされており、相談者は特別縁故者にあたると判断される可能性が高いと考えます。
  4.  また、特別縁故者として申し出を行うためには、まず、家庭裁判所に対し、相続財産管理人の選任申立を行う必要があります(民法952条)。
  5.  相続財産管理人が選任されると、一定期間(6ヶ月以上の期間)を設けてその間に相続人は名乗り出るよう相続人捜索の公告が行われ、相続人の申出がないままこの一定期間が経過すれば、特別縁故者として申し出をすることができます(民法958条、民法958条の2)。なお、この特別縁故者であることの申し出は相続人捜索の公告期間の満了後3ヶ月以内に行う必要があります(民法958条の3第2項)。この申し出に対し、家庭裁判所の審判を経て特別縁故者として認められれば、財産の分与を受けることになります。 
  6.  なお、特別縁故者にあたるとして、不動産の財産分与を受けることができる場合には、民法958条の3の審判を原因とし、審判書を原因証書として、特別縁故者が単独で、亡X相続財産からの所有権移転登記をすることができます。