遺留分権者への対応

 私は三人兄弟の長男で弟と妹がおり、母も存命です。この度、父が死亡し、遺品整理の際に父の遺言書が見つかり、内容を確認したところ、長男である私に全ての遺産を相続させる内容でした。私としては、生前の父の介護を行ってきたこともあり、当然全額貰えることはありがたいですし、母も異論は述べていません。
   しかし、私の弟や妹はそれぞれ事業による債務や個人的な借金を持っており、父の遺産をあてにしていたようで、反発が予想されます。弟や妹はどのような主張を私にしてくることが考えられるのでしょうか?

  1.  遺言で相続人の一人である長男が遺産全てを受け取れる旨の記載があっても、他の推定相続人である弟や妹は遺留分を有しています。
       遺留分とは、一定の相続人に法律上確保することを保障された相続財産の一部をいいます(民法1028条)。
       被相続人が行った遺贈や贈与の結果、この保障された額が確保されない場合には、遺留分を有する相続人は、この遺贈や贈与について減殺し、この財産額の回復を求めることができます(遺留分減殺請求)。
  2.  本件では妻と子が3人いるため、弟や妹の法定相続分はそれぞれ遺産の6分の1です。そのため、妹や弟は、遺留分減殺請求権として法定相続分の半分である12分の1を得る権利があります(民法1028条2号)。
       弟と妹は、遺産をあてにしていたということであれば、今後、遺留分減殺請求がされる可能性は高いと考えます。
  3.  なお、遺留分には行使期間の制限があり、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければなりません(民法1042条)。
  4.  ただ、遺留分の金額については、生命保険金額を含むのか否か、特別受益を考慮するのか、不動産を含む相続財産をどのように考慮するのか等、争う余地はあり、法律的にも難しい問題を含む可能性があるため、専門家にご相談いただくことをお薦めいたします。
       また、遺留分減殺を受けても支払ができるように、少なくとも弟や妹が遺言の内容を知ってから1年間は、相続した財産を保持しておいてください。