売買契約締結後から決済までの間の売主の死亡等
- 当社は、平成29年9月9日、中古の一戸建の売買契約を仲介しました。決済(移転登記・引渡・残代金支払)は契約締結日の2か月後を予定しています。
- ところが、契約を締結してから1か月して、売主が脳溢血で倒れ、意識不明で入院してしまいました。決済日までに亡くなるかもしれないそうです。
- 売主には、奥様とお子様1名がいます。仲介業者として、どのように決済の段取りをしたらよいでしょうか?
- 売主が決済日まで生存しているが意識が戻らない場合
- 売主が決済まで生きているが意識が戻らない場合には、司法書士は本人の意思確認ができないことから、所有権移転登記を引き受けてもらえないのが通常です。
- その場合、売主を成年被後見人として成年後見人の選任の申立てをして、成年後見人を代理人として決済することが考えられます。
ただ、成年後見人が選任されるまでは相応の期間を要し、現実的には決済日に間に合う可能性は低いと考えられますので、その場合には、①買主の協力を得て事実上決済日を延期し、成年後見人の選任を待って成年後見人と決済を行う、②売主の意識が回復した後に決済する、③売主が死亡した後に相続人との間で決済する、のいずれかを選択することになります。
- 売主が決済日までに死亡した場合
- 売買契約では、契約締結時に売主から買主に目的物の所有権が移転するのが原則ですが、通常の不動産売買契約では、「売買代金の支払と所有権の移転は同時に行うのが公平である」という見地から、決済時に所有権が売主から買主へ移転する旨の特約が定められているのがほとんどです。
- このような特約がある場合、売買契約を締結しても所有権は買主に移転しませんので、売主の死亡により相続人が所有権と所有権移転登記をするべき売主の地位を相続することになります。
そのため、相続登記を一旦行い、その上で別途相続人から買主への所有権移転登記をする必要があります。