マンション購入者が承継する前所有者の未払債務の範囲と強制執行
- 私はあるマンションの一室を最近購入しました。
- 管理組合より、「前所有者のときに、管理費の滞納があり、弁護士に依頼して管理費と遅延損害金の支払い請求訴訟をした。この訴訟で、滞納管理費や遅延損害金の額は確定している。現在の所有者であるあなたに管理費、遅延損害金、弁護士費用を払って欲しい。」といわれました。数字リストです。
- 管理規約には、滞納管理費の請求に要した弁護士費用は、区分所有者が負担することが記載されています。
- 管理組合からの請求に応じる義務はあるのでしょうか?また、支払わずに放置しておくと、強制執行される可能性はあるのでしょうか?
- 現所有者が承継する債務について
- 滞納管理費やその遅延損害金は、「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権」(区分所有法7条1項)として、区分所有建物の特定承継人である新所有者が支払義務を負担します(区分所有法8条)。
- 管理費等の請求訴訟に要した弁護士費用については、規約で弁護士費用を滞納した区分所有者に負担させる旨を記載すれば、区分所有者に負担させることができるとされています(区分所有法7条1)。
本件では、管理規約において、滞納管理費の請求に要した弁護士費用は区分所有者が負担する旨記載されていますので、前所有者は弁護士費用の支払義務を負担することになります。
なお、国土交通省が作成している標準管理規約には、滞納管理費の請求に要した弁護士費用も区分所有者の負担であることが明記されています。 - したがって、区分所有建物の特定承継人である現所有者は区分所有建物の特定承継人として、滞納管理費やその遅延損害金、弁護士費用の支払義務を負担することになります。
- 現所有者への強制執行について
- 区分所有法第8条によれば、管理費等の債権は、区分所有者の特定承継人(現所有者)にも請求できるとされています。
- したがって、管理組合は、元の区分所有者に対して判決や公正証書などの債務名義を有していれば、その特定承継人である現在の所有者に対しても、承継執行文の付与を受けて強制執行することが可能です。