民泊とマンション管理規約の改正
私が理事長を務めるマンション管理組合の管理規約では、専有部分の用途について、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」と定められています。この度、マンション管理組合の理事会で、当マンションでは、民泊によるトラブルを避けるため、民泊を禁止する方針を取ることとしました。この場合、当組合の管理規約を改正する必要はあるのでしょうか?
- 「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」との定めは、マンション標準管理規約に従った規定内容です。
- この「専ら住宅として使用する」と言えるか否かは、もっぱら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断され、民泊(一時的な宿泊所)としての利用は、これに当たらないものと考えられています。
- したがって、当マンションの現在の管理規約でも、民泊でマンションの一室を宿泊者に利用させると管理規約違反となるため、直ちに管理規約を改正する必要はありません。
- もっとも、現在の標準管理規約は、民泊を行うことを想定した条項となっておらず、民泊が禁止されているのか否かが一義的に明確とはなっていません。そのため、管理組合の方針として、民泊を禁止する場合には、トラブルを防止する観点からは、明確に民泊を禁止する内容に管理規約を改正しておくことが望ましい対応といえます。
- 具体的な、民泊禁止の管理規約の規定内容は、以下のとおりとなります(なお、この規約例は、国土交通省が住宅宿泊事業法の成立を受けて発表したマンション標準管理規約の改正案の条項を参照しています。)。
なお、管理規約の改正は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決議が必要です(区分所有法31条1項)。
上記管理規約の該当条項(1項)に、下記の2項・3項を追加
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行
って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。
3 区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特
定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用して
はならない。 -
なお、家主居住型(住宅宿泊事業者が、住宅内に居住しながら、当該住宅の一部を利用者に貸し出す形態の民泊)での民泊事業のみを可能とする場合の管理規約の例は、以下のとおりとなります。
上記管理規約の該当条項(1項)に、下記の2項・3項を追加2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行
って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。
3 区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特
定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用する
ことができる。