同族会社の事業承継の準備

  1.  ある会社の創業者である社長が、ゆくゆくは社長業を引き継ぎたいと考えて、長男を取締役に選任しました。なお、会社では次男も働いており、人望もあるため、将来の社長候補ではないかと言われているようです。
  2.  なお、会社の株式は、社長が70%、長男・次男がそれぞれ15%ずつ保有していました。また、他に社長の推定相続人として、奥様と長女がいました。
  3.  社長としては、将来、子ども達の間で経営権争いが生じることを避けたいと考え、当事務所に相談に来られました。
  4.  同族会社の事業承継の問題は、株式の承継の問題だけでなく、将来の相続に備えて、相続人間の紛争をできるだけ予防するために、不満が出にくい遺産の分配方法を定めた遺言の作成を検討したり、万一紛争が生じたとしても、長男が取得した株式について、遺留分減殺請求の対象となって株式が分散することを避けなければなりません。
    さらに、相続税の試算を行い、納税資金の確保も考える必要があります。
  5.  そこで、当事務所では、社長の遺産の全体像を把握し、奥様の生活費の確保や、他の相続人の遺留分に配慮した遺言を作成するとともに、万一長男に対して遺留分減殺請求がなされたとしても、株式以外の財産を先に減殺の対象とするように順序を定める公正証書遺言を作成しました。
  6.  また、税理士・公認会計士を交えて、将来の相続税の負担を試算して、会社の退職金制度や生命保険を活用して、無理なく会社から一定の資金を支出できるようにする等、納税資金を確保するための工夫を行いました。
  7.  さらに、社長と長男と弁護士・公認会計士を交えて、会社の現状分析や将来の事業計画検討のための打合せを重ねることで、次期社長の勉強の場を提供することもできました。
  8.  このように、同族会社の事業承継の問題は、単に,会社の経営の引継ぎの問題だけではなく、将来の相続問題全体を視野に入れながら対応策を講じる必要がありますし、準備に時間を要する場合もありますので、早めの相談をお勧めします。